福岡 九州国際大付 6年ぶり8回目
春からのさらなるパワーアップに期待
今春のセンバツではベスト8、明治神宮大会ではベスト4と実績を残してきた中で迎えた夏だが、一切のプレッシャーを感じさせない堂々たる戦いぶりで福岡大会を制した。
センバツで準優勝した2011年以来の春夏連続出場となる。春夏連続出場を支えたのがチーム打率.356の打線だ。
7試合で6本塁打、50得点と破壊力抜群の打線が持ち味だ。花巻東の佐々木麟太郎と並んで注目を集めた左の強打者佐倉は、打線のつながりを考えて6番と打順は変わったものの、準々決勝と準決勝で3本塁打を放ち、打率.500、17打点をマークした。各所で持ち前の勝負強さを発揮し、準々決勝以降は5番に座った。
ただ、5回戦でアクシデントが起こる。昨秋からチームのエース左腕としてけん引してきた香西が体調不良でベンチを外れた。エースを失った窮地を救ったのは控えの2年生右腕池田だ。香西不在となった5回戦の福岡工大城東戦では、完封に抑えその後の4試合全てに先発で登板した。
ベンチに香西が戻った決勝の舞台でも池田が登板し、筑陽学園をわずか3安打に抑えて完封勝利。チェンジアップで緩急をつけた投球を用いて相手打線を翻弄した。池田は昨秋までベンチ外で打撃投手を務めており、練習の中で制球力や投球リズムを磨いた。130キロ前半のストレートとスローカーブといった緩急を織り交ぜる投球を武器とする香西の背中を追いかけた。
エース不在となったチームの窮地を2年生右腕池田の急成長がチームを救った。
春よりもさらに選手層の厚くなったチーム力で頂点を狙う。
2022年夏 福岡大会結果
2回戦:10対0 大和青藍、3回戦:11対1 光陵、4回戦:8対1 明善、5回戦:1対0 福岡工大城東、準々決勝:10対4 東筑、準決勝:9対4 小倉工、決勝:1対0 筑陽学園
佐賀 有田工 9年ぶり2回目
春夏連続での出場で目指す夏の甲子園で1勝
佐賀県代表が春夏連続で甲子園に出場するのは、2001年以来実に21年ぶりのことである。
初のセンバツの舞台では、東京代表の国学院久我山に2対4で初戦敗退した。その敗退後なかなかチームとして勝てない時期が続いた。
得点力向上が課題だったため、普段よりも重量のあるバットでティー打撃や素振りをひたすら繰り返し、成功率の低かった犠打もバント練習を日課として取り組んだ。結果、夏の佐賀大会では5試合で22犠打と見事に課題克服を果たした。
このチームの中心は、エースで1番の塚本だ。3回戦では腰痛のため登板は回避し左翼に回った。ただ、準々決勝からは一人で全て投げ抜いた。特に変化球の制球がよく、上原の好リードもあり打たせて取る投球が売り。
また、塚本の腰痛で急遽3回戦のマウンドを託されたのが控え投手の一ノ瀬と外野を兼務する土谷だ。8回までを1失点で一ノ瀬が抑えると、9回無死のイニング途中から土谷が登板し無失点で抑えた。
打撃面でも、随所で勝負強さが光った。準決勝の東明館戦では、昨夏の甲子園を経験した相手投手を3回に攻略し集中打を浴びせ、一挙4点を挙げて逆転で勝利した。
決勝でも、7回に犠打や犠飛を挟んで4連打で逆転に成功するなど限られたチャンスをものにしてきた。
その中心人物が、春は控えメンバーだった犬塚だ。準決勝と決勝で逆転適時打を放つなど勝負強さを見せた。また、1球ごとに左右の打席を代えて立つ両打ちの山口など個々の魅力にも目が離せない。
2022年夏 佐賀大会結果
2回戦:7対6 唐津工、3回戦:4対1 多久、準々決勝:11対1 佐賀学園、準決勝:4対3 東明館、決勝:3対2 神埼清明
長崎 海星 3年ぶり19回目
プロ注目の2枚看板を武器に挑む県勢4強
2007年の長崎日大以来、長崎代表は4強から遠ざかっている。
ただ、今年の夏は大いに期待が持てる。プロ注目の右腕2枚看板が揃っているからだ。2枚看板の一人宮原は最速147キロという直球の球威で勝負する投手。もう一人は最速144キロの球速以上に手元で伸びる直球が持ち味の向井だ。キレのある変化球を武器にしている。この投手陣を擁して、チーム防御率は1.35をマークした。
打線は「強打の海星」の名に恥じないチーム打率.388を誇る。準決勝では12安打、決勝では13安打と破壊力を見せる。特に決勝戦では、主砲森の豪快な2ランや丸本、西村といった3~5番で6打点をマークした。また、2番の田川と7番の牧は全試合安打を記録するなど、どの打順でも得点を狙える切れ目のない打線が持ち味だ。
昨秋の九州大会では今春のセンバツをかけた準々決勝で有田工(佐賀)に0対2で敗戦。この悔しさを胸に冬の成長を遂げた。
甲子園4強を目指して、熱い戦いを見せてくれるだろう。
2022年夏 長崎大会結果
2回戦:7対0 島原農、3回戦:11対1 西海学園、準々決勝:2対1 鹿町工、準決勝:5対2 大崎、決勝9対2 創成館
熊本 九州学院 7年ぶり9回目
ヤクルト村上の弟・村上慶を筆頭とした打力に注目
投打のバランスとワンチャンスをものにする勝負強さで熊本大会を制した。まず初戦から2試合連続でコールド勝ちを収めると、準々決勝の専大玉名戦では5対3とリードした展開で雨のため継続試合に。その翌日も雨のため順延という厳しい状況になった。ただ、2日後に行われた試合でそのまま勝ち切った。準決勝では4安打に抑えられながらも勝負強さを発揮して東海大熊本星翔に逆転勝利。
決勝の相手は因縁の秀岳館。2016、2017年に決勝で対戦し、どちらも優勝を逃した相手だ。その因縁の相手に対し、2桁安打で6点をあげ投げてはエースの直江が4安打完封と投打がかみ合い完勝で熊本を制した。
中でも大きな注目を集めているのが、ヤクルトの4番村上宗隆の弟で身長190センチ94キロと兄にも勝る体格をもつ村上慶太だ。兄譲りのパワーで昨秋から4番に定着している。決勝では3回に先制タイムリーを放つなど活躍した。兄のフォームを動画で見ながら練習を行っていることもあり、構えからスイングまで兄そっくりである。兄が1年夏に4番として甲子園に出場した際は果たせなかった甲子園でのヒットを弟がやって退けるか見ものだ。
他にも、1番の大城戸は出塁率5割超で俊足が持ち味の選手や9番ながら準決勝で本塁打を放った瀬井も期待のもてる選手だ。また、チーム打率も.338と切れ目のない打線が持ち味だ。
投手陣は、2年生エースの直江が全5試合に登板し決勝まで完封した。130キロ台中盤のストレートと緩急のある変化球で打者を翻弄する。防御率は1.32と安定した投球を見せる。
12年ぶりの白星をかけて躍動する。
2022年夏 熊本大会結果
2回戦:20対2 東稜、3回戦:7対0 菊池、準々決勝:5対3 専大玉名、準決勝:4対3 東海大熊本星翔、決勝:6対0 秀岳館
大分 明豊 2年連続8回目
甲子園に出ることではなく、勝つことを目標に挑む夏
大分県内では公式戦無敗と盤石の強さを見せて、2年連続の甲子園出場を決めた。
その強さを支えたのが、多彩な得点パターンを生み出してきた攻撃面にある。チーム打率は.369、16盗塁、5試合で52得点と足を絡めつつも長打力も持ち味の打線は抜け目がない。ヒットの延長にホームランがあるという意識付けがしっかりされているため、チームを通してフライアウトは少なく、切れ目のない打線を形成している。
中でも昨春センバツの準優勝メンバーである竹下は、打率.600、3本塁打、12打点といずれもチームトップの数字をマークしている。また、昨夏の甲子園に出場経験のある宮崎も打率5割超、2本塁打6打点と好調だ。他にも勝負強い打者やセンスが光る打者が揃っており、まさにどこからでも点が取れる打線だ。
投手陣は、短いイニングを各投手で繋いでいく起用で打者の目先を変えている。特に左腕の坂本は球種の多さと制球力を武器としている。また、右腕の野村はタイミングの取り方が上手く打者のタイミングをずらし、翻弄する。そして、ケガで戦線を離脱していたエース候補の森山が復調すればさらに投手陣に磨きがかかるだろう。
投打ともにバランスの取れた総合力で、日本一を目指す。
2022年夏 大分大会結果
2回戦:9対2 三重総合、3回戦:9対2 大分雄城台、準々決勝:11対1 鶴崎工、準決勝:11対3 津久見、決勝:12対3 大分舞鶴
宮崎 富島 3年ぶり2回目
地元から愛される公立校が挑むは甲子園1勝
春1回夏1回の甲子園出場経験がある富島は、今大会で甲子園初勝利を目指す。そのためのキーパーソンが二刀流の活躍を見せたエース右腕の日高だ。身長184センチから繰り出される直球は最速148キロを計測し、全5試合中4試合で完投するなどスタミナも抜群だ。宮崎大会では、自責点2、防御率0.42と圧巻の投球内容を見せている。また打撃面では3番として打率.467をマークし、まさに投打で欠かせない存在だ。
精神的にもタフさを兼ね備えている。準々決勝の日章学園戦では1対1で迎えた9回2死満塁というピンチ。フルカウントとボールすら許されない局面でも冷静に打者を打ち取って難なく切り抜けた。そして11回に海野が2ランを放ち勝利を収めた。
また、決勝の宮崎西戦では二塁を踏ませない投球を見せ、最後の1球で自己最速をマークするなどの活躍で2安打完封で宮崎を制した。
5月に行われた県選手権では、失策絡みでの失点や自身の暴投で崩れた。心を落ち着かせてマウンドに立てるようにという濱田監督の指導もあり、メンタル面で大きく成長した。
この濱田監督は以前、宮崎商を率いた2008年夏に元ヤクルト左腕の赤川を擁して甲子園1勝を挙げたことがある。
しかし、富島では過去2回の甲子園出場がありながらもいずれも初戦敗退と勝利が遠い。
この夏は学校の新たな歴史を刻めるか注目したい。
2022年夏 宮崎大会結果
2回戦:12対0 小林、3回戦:6対0 都城東、準々決勝:3対1 日章学園、準決勝:4対2 小林西、決勝:2対0 宮崎西
鹿児島 鹿児島実 4年ぶり20回目
ノーシードからの逆襲で見せた伝統のカジツ野球
4年ぶりとなる甲子園の切符を掴んだ原動力は、左腕エースの赤嵜の復調にある。
昨夏の決勝以降左肘の疲労骨折により投げられない状態が続いた。監督は赤嵜に無理をさせず、夏に照準を合わせて1回戦の神村学園戦と準々決勝以降の3試合に登板させ、いずれも完投し6失点の抜群の安定感で勝利を飾った。40回2/3を投げて40奪三振、常時130キロ台のストレートと持ち味のスライダー、チェンジアップを織り交ぜて投球に幅を持たせている。
他にも右の森山、久留須、松元、左の筏といった豊富な投手陣が赤嵜を支えた。
チーム打率は.299だが、一本欲しい場面でしっかりと結果を出す勝負強さを持ち合わせている。
特に打線の中核を担う4番の永井は5打点をあげ、5番の濱﨑も大事な場面で打点をマークしている。
初戦の神村学園戦、準決勝の鹿屋中央戦はいずれも延長11回までもつれた試合となったが、勝ち切った。
決勝の大島戦では、プロ注目で最速146キロの直球を投げ込む左腕大野から6回に2点を先制すると続く7回にも加点し、9回に1点差まで追い詰められたものの振り切って優勝した。
この夏は鹿実の名に恥じない、ハツラツとしたプレーに期待だ。
2022年夏 鹿児島大会結果
1回戦:2対1 神村学園、2回戦:10対0 喜界、3回戦:6対3 国分、準々決勝:6対0 鹿児島、準決勝:7対3 鹿屋中央、決勝:3対2 大島
沖縄 興南 4年ぶり13回目
12年ぶりの優勝へ果敢に挑戦
4年ぶり13回目の夏の甲子園への切符を手にした。そこまでの道のりは険しいものだった。
部内で新型コロナの感染者が出たため今春の県大会は出場辞退となった。ノーシードで迎えたこの夏、ひと回りもふた回りも成長した姿を見せた。特に2010年時に春夏連覇を達成した左腕エースの島袋コーチから指導を受けた投手陣は力がある。
中でもエースの生盛は29回1/3を投げて防御率0.61を記録し、スライダーを決め球に32個の三振を奪った。昨秋に腰椎分離症で離脱したものの、トレーニングを積んだ結果、準決勝の未来沖縄戦で自己最速の147キロをマークした。また、決勝で先発のマウンドを託された安座間も3試合13回を投げて防御率0.69と安定感を見せる。
打撃は、3番禰覇と4番の盛島が中核を担う。禰覇は沖縄大会で3試合連続の本塁打を放ち俊足強打の選手だ。盛島は準決勝の延長12回に中前二塁打を放ち、これが決勝点となってチームを勝利に導いた。勝負強さが持ち味だ。
オリックスの宮城を擁した4年前以来の甲子園の舞台。沖縄県にとっては、本土復帰50年の節目の年でもある。
この節目の夏に勝利を目指す。
2022年夏 沖縄大会結果
1回戦:11対0 沖縄工、2回戦:不戦勝 宜野座、3回戦:5対1 ウェルネス沖縄、準々決勝:5対0 宜野湾、準決勝:6対4 未来沖縄、決勝:7対1 沖縄尚学